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2012年3月30日 神田雑学大学定例講座No.594

2012年中国情勢 講師 塩崎哲也



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講師プロフィール
1.はじめに
2.2012年は各国トップ交代の年
3.中国経済の実態
4.政治体制
5.権力闘争
6.現政権が抱える重要課題


講師プロフィール

塩崎哲也講師の写真 NPO法人神田雑学大学一の中国通。
中国に長い間単身赴任し、余暇を使って中国情報をネット・雑誌・新聞で調査し、中国レポートを作成して関係者に送り続けた。
会社を辞めて日本に帰ってきた現在も、その調査意欲は衰えず、日々新たな情報を満載した「塩崎レポート」を発信し続けている。


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1.はじめに

 今回は、私たち外国人が、中国にいるとき、人前で話題にしてはいけない政治問題と体制の批判に関するお話です。私が中国にいた間、日本領事館から、日本人同士で飲み屋などの人前で政治問題を語ってはいけないという注意は何度も受けておりました。今まで何度もNPO法人神田雑学大学で講演をさせて頂きましたが、この問題は意識的に避けてきました。
 2012年というトップ交代の重要な節目に当たり、中国国内の民衆もネット等の普及によって情報に触れ、汚職問題や格差問題が政局を揺るがしかねない時代になっています。昔から中国歴代王朝は、民衆の反乱がきっかけとなって倒れてきました。中国政府のトップはそれをよく分かっています。そこで今回、あえて政治問題をテーマにしました。
 経済の現状、政治体制(政治局常務委員会、次期指導者)、要解決問題(外交問題、国内問題)の順に話を進めます。

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2.はじめに

各国トップ交代と中国との関係
 2012年は、東アジアを取り巻く国々のトップが交代し、それに伴って東アジア情勢も大きく変わり得る節目の年となるかもしれません。
 まず、昨年末に北朝鮮の金正日が死去し、三男・正恩氏があとを継ぎました。これが朝鮮半島の平和と日本が抱える拉致問題解決にプラスとなるか心配されています。

講義中の塩崎哲也講師の写真  今年1月17日に行われた台湾の総統・国民議会の選挙では、馬英九前総統・国民党が推進する中国よりの政策を容認するのか、それとも台湾自主路線を掲げる蔡・民進党を支持するかが最大の争点となりましたが、台湾人民はもはや大陸との政治・経済の友好・発展以外に台湾の活きる道はないと総統・議会ともに馬英九・国民党を支持しました。

 また3月、ロシア大統領選挙では、プーチン元大統領が大差で返り咲きを果たすのか。プーチン首相の進める経済政策は順調に進展中とは言い難い状況ですが、プーチン氏はすでにフルシチョフ以来の多くの中ロ国境線問題を解決し、国内問題に専念できる体制を整えました。

 4月はフランスの大統領選挙です。EU諸国のアメリカ離れが顕在化しつつあり、ギリシャ・イタリア・スペインの財政不安から、EUの一方の盟主フランスも中国の経済力にすり寄る姿勢を強めています。
 10月、中国では5年に1度の共産党大会があり、そこで胡錦濤総書記から習近平氏にバトンタッチされ、首相を含めた政治局常務委員会のメンバーも一新される予定です。

 11月はアメリカ大統領選挙です。オバマ大統領の楽勝は期待できず、保守層の支持を期待して、中国との対決姿勢を強めようとしています。経済面でTPP、外交面でミャンマーの抱え込み、軍事面で東アジアシフトなど、昨年来中国封じ込め政策が目立ちます。
 12月は韓国の大統領選挙です。最近の経済面での中韓の蜜月ぶりはみなさんご承知のとおりです。  そんな中にあって日本の野田政権も、6月頃には解散・総選挙が避けられないとの情勢下にあります。

中国 トップ交代でも基本方針は不変
 中国では今秋、5年に1度の中国共産党大会が開催され、胡錦濤体制から習近平体制へ最高指導部が交代する予定です。権力が移行する敏感な時期にある中国が最も重視しているのは「安定」です。国内を見ると、格差の拡大は依然として深刻な状態で、2年越しのインフレ、それに絡む党幹部の腐敗などへの不満から、各地で暴動が頻発しています。

   また、中国経済の成長を牽引してきた輸出も、ヨーロッパの信用不安を受けて、沿岸部・輸出関連の中小製造業の倒産が相次ぎ、中国経済に暗い影を落としつつあります。
 内政上のさまざまな懸案の解決に全力で当たらなければならない中国は、安定した外交環境を望んでいます。今年の中国外交の展望をめぐり、楊外相は「さらなる良好な外部環境を作る」と強調しています。今、中国が安定を維持する上で重視しているのは、アメリカ、朝鮮半島情勢、日本との関係です。
講義会場の写真

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3.中国経済の実態

 1月17日、中国がGDP成長率(速報値)を9.2%と発表しました。これについて日本のメディアは、一斉に「中国経済が減速。原因はEU金融不安による輸出の大幅ダウン、自動車販売台数の伸び悩み、不動産バブルがはじけたため」と報じています。NHKテレビでは下図のように経済の減速をセンセーショナルに伝えています。

中国経済の減速を伝えるNHKテレビ

 中国政府は「成長率が10%を下回ったのは、インフレを収束させ、不動産バブルを軟着陸させるための政策であり、2012年も7〜8%代に抑えるようコントロールする」(2012年、計画8.5%)と説明しています。なぜか日本メディアは、中国政府のコメントを深く取り上げることなく、「中国景気が減速」との見出しを掲げました。

 考えていただきたいのは、日本のGDPを見て欲しいのです。中国が10%と見込んでいたのが9.2%になった。9.2%の成長だって大変な成長です。日本のメディアは、中国減速の原因として「EU危機の問題で輸出が減ったということ。自動車が去年やおととしのように売れなくなってきた。不動産のバブルがはじけた」ということから、「中国の景気は減速している」と言っています。
 これに対して中国は、すぐ反応して「冗談じゃない。9.2%に下がったのは政府が意図してやっていることで、要は物価を抑えるためと不動産バブルの軟着陸を目指すために過剰な成長をおさえているのだ」と発表しています。

昨年の状況と今年の目標
 2月20日、アイルランドを訪問中の次期トップ習近平氏は「今年から経済成長の目標を引き下げる。これは経済発展モデルを内需主導型へのシフトを強めるため」と述べています。
また全国人民代表大会(全人代)が3月5日、開幕。温家宝首相が読み上げた政府活動報告の数値目標、10のキーナンバーといいましたが、それを見ると中国経済が「積極」から「抑制」へ向かって舵を切ったことがわかります。10のキーナンバーを下に掲げてみましょう。この発表は外国向けではなく、自国に向けたものであることに注目してください。

(1)「積極」から「抑制」へ 7.5%成長率
講演会場風景  政府は2012年の実質GDP(国内総生産)成長率の目標を7,5%と、8年ぶりに数値を下げました。このことは、リーマンショック後に打ち出した4兆元(約48兆円)の景気対策は、不動産価格の高騰やインフレといった副作用が大きく、今後は、無理な景気浮揚を図らないというメッセージが込められているようです。

(2) 8000億元 財政赤字
 2011年に続き2年連続の縮小になります。中国の国債発行残高のGDP比は20%に満たない水準です。政府が「積極的な財政政策」をうたいながらも赤字額を絞っているのは、欧州危機が影響しています。野放図な財政拡大が国家経済を窮地に追い込むことが現実となり、危機を回避したいとの意図が見えます。

(3) 4% 物価上昇率
 消費者物価の上昇率を4%前後に抑えるとの目標も提示しました。2011年通年のインフレ率は5.4%でしたから、1ポイント以上も引き下げることを意味します。インフレの抑制は3年越しの懸案で、成長率目標を引き下げるのも、物価を重視する姿勢をより強めているための現われです。

(4) マネーサプライ伸び率14%に
 マネーサプライ(M2)の伸び率目標は14%としています。これは昨年の目標16%(実績13.6%)より低く設定しています。「穏健な貨幣政策」に沿った内容で、景気の下支えを目的とした大幅な金融緩和は考えていないことです。昨年来やや強引に進めている不動産価格の調整は、融資抑制が主対策となっています。

(5)輸出入伸び率 10%
 輸出入総額の伸び率は10%にとどめる。2011年の実績は22.5%の伸びでした。また、「国際収支の状況を引き続き改善する」としており、これは貿易黒字の圧縮を意味することで、原油をはじめとするエネルギー価格の上昇で輸入額は増える見込みなので、人民元レートの緩やかな切り上げを進める意思表示とも読めます。

(6)新規就業数(都市部)900万人
 この数字は、都市部における新規就業の増加数を指します。ちなみに2011年は1221万人でした。これには2つの含意があり、経済成長の抑制を前提としていて、都市部の雇用吸収力に大きな期待ができないというのが1つ。もう1つは、農村部から都市部への人口移動が峠を越えているため、この程度の低い数字でも社会不安を招くことはないと考えているのでしょう。

(7)公共住宅着工数 700万戸
 政府は今年、700万戸の保障性住房(中・低所得者向けの住宅)を着工するとしています。住宅価格はピーク時より3、4割は下がっていますが、それでも庶民には手の届かない水準です。中・低所得者向け住宅の整備は国民の不満を和らげつつ、一定の公共投資を保つ一石二鳥の政策といえます。

(8)教育費 GDPの4%
 教育に力を入れるのはもうずっと目指していることです。内陸部の貧困地域をはじめ初等教育の水準に問題がある地域が多く、底上げが急務になっています。政府活動報告でも、農村の小・中学校の立地を改善し通学しやすくするほか、「栄養改善計画」の実施を掲げています。

(9)農業支援に1兆2287億元
 格差の元は農村部の所得が少ないことです。政府が三農(農業、農村、農民)問題に費やす金額です。これは前年比で1868億元の増加としています。農地の規模拡大や灌漑の整備、災害対策が柱となっているほか、水道や電気などインフラ整備も進める計画です。食料安全保障の観点でも、増収対策に力を入れる考えを示しています。

(10)PM2.5 環境規制
 いま、大気汚染が中国大都市を中心に大きな問題になっています。この数字は直径が2.5μm以下の超微粒子を指します。ディーゼル車の排気ガスなどに含まれ、ぜんそくや気管支炎を引き起こすとされる。北京や天津、上海を含む長江デルタ地域、広州を含む珠江デルタ地域などでPM2.5の観測を始めると明記されており、近い将来、環境規制に盛り込まれる可能性が高まっています。

日本メディアの報道の検証
(1)輸出の減速
 日本メディアは、欧州信用不安で最大の輸出先・EUへの輸出が伸び悩んでいるためと報じています。
中国の輸出の伸びを示すグラフ  中国政府のコントロールでは、数字だけを捉えると、伸率が減少しているかにとれますが、これは、上期の伸びが異常に高かったことに加え、中国政府がアメリカとの貿易摩擦の種(アメリカ貿易赤字の50%近くが対中国)となっている巨額貿易黒字を抑える政策の結果によるものです。年を通して下がりきったところでも13%も伸びているのです。
 中国国家統計局の2011年・貿易統計の速報値をみますと、通年の対EU貿易も堅調であることが分かります。ギリシャ危機に端を発し、アイルランド、スペイン、イタリア、ポルトガルと不安が顕在化したのは2010年のことで、その影響が1年後の秋に顕在化してというのは少し無理があります。

中国の輸出の伸びを示すグラフ

(2)中国政府の経済構造の改革政策
 中国はそのために貿易構造そのものを改善すると言っています。例えば、アメリカとの貿易黒字は中米間の最大の政治問題になっていますが、上表を見ても2007年くらいから舵を切って、減らしてきているのが分かります。今までの貿易依存体質から内需依存型へシフトを計画しているのです。
各国の輸出依存度
 右表は主要国の経済の貿易依存度を示したものですが、中国経済の貿易依存度は、かつては(02〜07年)30%前後ありましたが、内需依存型経済へのシフト政策で20%余まで低下してきています。輸出/入バランスをみると、輸出が輸入を大きく上回っていて、これが貿易黒字を生む原因です。
 ドイツや韓国が今でも30%を超す高い依存率を示し、逆にアメリカや日本が10%前後で低い依存率であることが分かります。
 中国の輸出の増加の大きな原因の一つが外資系企業による加工貿易でした。外資系企業(主として日本、韓国、台湾)が部品を輸入し、それを組立、製品化して輸出することが輸出額を伸ばしてきたのです。
 08年から、中国政府は加工貿易の割合を減らすべく、場合によっては中国からの「企業撤退もやむなし」との、強引とも映る政策を2007年くらいから推し進めています。
中国の貿易構造 ・企業優遇措置の廃止
・賃金アップの誘導
・労働契約条件の遵守強要 etc
 もう一つの貿易構造上の問題は、貿易相手国との輸出/入バランスの大きな歪みです。特にアメリカに対してどういうことになっているかです。

 右図から分かりますように中国からの輸出/入バランスの歪みの大きい(輸出過多)のはEUとアメリカで、反対に輸入過多は日本、韓国、台湾です。
 香港の輸出過多は極端ですが、これは香港に輸出した製品を、EU、アメリカに再輸出(再輸出率95%)するもので、多くは香港に事務所を置く日本、韓国、台湾企業が主体となっています。
これら東アジア3国(地域)系企業の加工貿易品の輸出がEU・アメリカに向かっていて、EU・アメリカの輸入過多を引起しているのです。

(3)新車販売量に急ブレーキ
 日本の報道では下のテレビ画面のように中国で自動車が売れなくなったと騒がれています。2011年新車販売台数は09年、10年に比べると伸びが止まったことはたしかです。
 08年1,000万台、09年1,400万台、10年1,800万台に対し、2011年は1,840万台に止まっています。
新車販売台数の伸び

日米中の新車販売台数の伸び  この数字から見ると自動車は売れなくなったように見てとれます。
上の左のグラフでも2009年には前の年より46%増、2010年は32%増、それに対して2011年は2.5%しか伸びなかった、という言い方です。ですが、1500万台の10%といえば大変な数です。
現在、日本は700万代台くらい作って、そのうち400万台が国内向けです。
 アメリカでも1000万台を少し超えたくらいです。ですから3ヶ国の自動車の販売台数をグラフにして並べてみると右のようになります。中国の成長性の凄さが一目でわかります。

(4)新車販売台数の急ブレーキの原因
 ・新車購入優遇政策の完了

 金融危機対策、および農村の景気刺激策として、08年11月から小型車を購入に際して手厚い補助金が支給され、それがために新車販売台数が驚異的な伸びをしめしました。その助金政策が10年末で完了し、販売量が減少したのです。
参考 1600cc以下を購入する場合:取得税10%⇒5% 
さらに農村での新規購入13%補助、買い替え購入価格の10%補助、この補助が2011年からなくなった。
 ・ナンバープレート発給制限
北京、上海、広州などの大都市で近年の急速な自動車走行台数の増加のため、信号システム、道路整備、駐車場などのイ ンフラが追従できず、極端な交通渋滞、深刻な排ガス環境汚染が常態化しています。その対策として新規購入者へのナン バープレートの発給を約50%程度に抑える抽選発給制度を実施しています。このあいだ上海の友達が来たので聞いてみますと、新車を買う費用の5割くらいの費用がナンバープレートの給付を受けるのにかかるそうです。これらの大都市は年間百万台以上売れるところなのです。そこが50%しか発給しないのでは販売の伸びが止まるのも当然でしょう

社会消費財の伸び堅調
 自動車の伸びが止まり、不動産も不調のなかでも、社会消費財全体の伸びは堅調を維持しています。
 社会消費財の伸びは、2011年は17%、2012年は14%の見通しとのことです。これは百貨店・スーパーが好調で、レストランなどの飲食業が絶好調によるものです。おかげで、日系の消費財専門店であるイトーヨーカ堂の成都1、2、3号店は絶好調です。成都のイトーヨーカ堂の成都1、2、3号店は全部が日本のイトーヨーカ堂の売上の倍くらいあるのです。利益でもすごい額です。人で溢れて、昨夏オープンの上海ユニクロも連日押すな押すなの盛況です。
 商務省の発表によりますと、だいたい毎年15%ずつ消費が伸びています。今年もそれくらいは十分維持できるといわれています。この間、新聞では17%になるだろうといういい方をしています。

●財政状況
中国の財政状況
2011年の中国財政収支状況は右図のようになっています。

財政収入 10兆3740億元 前年比  4.8%増
財政支出 10兆8790億元 前年比 21.2%増
財政赤字   5,050億元 公債比率 4.8%
2011年末 国債残高 GDP比 20%

 スタンフォード大学発表の世界34カ国の財政状況の健全性を表す主権財政責任指数で、トップはオーストラリアで、中国は5位と健全性は上位に位置づけられています。
 逆に危うい国は31位から34位は、ギリシャ、ポルトガル、日本、アイルランドの順です。同指数は単に財政赤字が大きい・小さいかというだけではなく、政府の現在の債務水準、時間の推移を踏まえた政府債務の持続可能性、財政をめぐる決定に対する政府の透明性と責任の範囲、という3つの要因が含まれているといわれます。

●日中経済力比較
(1)GDP比較
 日本と中国とアメリカのGDPをグラフで比較してみましょう。

日米中GDP比較

 永年、日本政府はことあるごとに国民に向けて、「世界第2位の経済大国」といってきました。その拠りどころは、GDPがアメリカに次いで(その差は大きいが)世界第2位であるということでありました。
 それが2009年には、中国に抜かれ、政治家は拠りどころを失ってしまいました。日本は円高ですから、名目GDPの比較では有利になるにもかかわらずこの姿です。
 これを、その国の本当の経済実力を示すという購買力平価GDPでは、すでに2000年時点で中国に抜かれていましたし、インドについてはまだまだ20年は大丈夫と高をくくっていましたが、ついに2011年にはインドにも抜かれてしまいました。こういう事実を日本のメディアはもっと国民に知らしめる必要があるのではないでしょうか。

(2)今や中国がくしゃみをすると、日本がマスクをする時代
 40〜50年以前、「アメリカがくしゃみをすれば、日本が風邪を引く」と揶揄されるほど日本経済はアメリカに依存していた時代がありましたが、現在の経済依存先は中国に替わってしまったのです。
日本の貿易相手国
 2011年、日本の対中貿易額は、対米日貿易額の3倍にもなっています。
 ですが、現時点では全面的に中国というのではなく、アメリカへの依存度も大きいので、「風邪を引く」というというより「マスクをして」風邪の用心をする程度でありますが、5〜10先には、中国の影響力はさらに大きくなり、「風邪を引く」どころか、「肺炎を警戒する」程度にまで大きくなると考えられます。
日本の貿易相手国
 昨年、TPPへの加入条件の交渉問題で国論を二分するほどの大騒ぎでした。そのとき韓国は米・韓2国間FTAを締結し、現在では日・中・3国間FTAの交渉に入っています。この交渉には日本も加わっていますが、なぜか日本のメディアも政治家も意見を述べていません。したがって国民も我関せずを決め込んでいます。

(3)日本、31年ぶりに貿易赤字を計上
日本の貿易相手国
 1月25日、NHKは正午のニュースで、2011年の貿易統計の速報として、日本が31年ぶりに貿易赤字に転落した、原因は、今年上半期東日本大震災の影響で輸出が大きく落ち込んだこと、上半期にはエネルギー輸入が増えたことを挙げていました。この貿易赤字は昨年の一過性のものではなく、これから始まるであろうEU圏の経済不振、日本が抱える経済構造上の問題などを考えると、この貿易赤字は今後常態化するのとの悲観的な見方を報じていました。

 JETRO発表の「日・中両国の貿易に関する調査レポート」によると、昨年の日中貿易総額は前年比14.3%増の3449億ドルに達しました。うち日本側の輸入額は1834億ドル(20%増)、対中輸出額は1614億ドル(8.3%増)となり、総額・輸入・輸出いずれも史上最高を記録しました。
 中国からの輸入は、スマートフォンに代表される通信機器が大幅に伸びました。また福島第1原発事故の影響から、日本では節電需要が拡大し、中国からの扇風機・電池などの輸入も拡大しました。
 対中輸出は金属加工用など工作機械の輸出が旺盛であるが、中国経済の減速傾向を受け、下半期以降、成長幅は明らかに縮小した。また昨年10月以降、日本の対中輸出は3カ月連続でマイナスとなりました。参考として、2010年の詳細を右に示します。
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4.政治体制

 いよいよ政治体制の話に入ります。最初に中国の政治基本理念からお話したいと思います。
●基本理念:三権分離の否定
 民主集中制とは、すべての権力が人民に集まる政治制度で、日本やアメリカのような三権分立は否定しています。「人民の権力は分けることができない、権力はすべて全人民のものであるべきだ」という考え方からです。
 憲法では「全国人民代表大会」(以下、「全人代」)が人民を代表して権力を行使し、人民がそれを監督する、という制度が採られています。全人代は、国家主席・副主席を選出、国務院総理(首相)などの閣僚の任命、中央軍事委員会主席・最高人民法院長(最高裁長官に相中国の政治制度は、社会主義国で多く見られる「民主集中制」が基本になっています。当)・最高人民検察院検察長(検事総長に相当)の選出、など重要ポストの指名・任命を行うほか、立法権、憲法の改正権を持っています。

●共産党の指導
 憲法上では全人代が最高機関となっていますが、憲法前文には、中国共産党が「指導政党」の地位にいて、共産党が全人代も含めた国家機関を指導することが規定されています。
中国の立法、行政組織
 たとえば、全人代の代表選出選挙では共産党が「指導」を行い、事実上の立候補制限を行うことで、共産党の意向に沿った代表が選出されるようになっています(もちろん党員でない代表も多くいますが、反共産党的な候補が立候補できる余地はありません)。
 また、人民解放軍も共産党の指導を受けることになっていて、これは「国防法」によって明確に規定されています。もちろん、国家主席や首相など、あらゆる重要ポストは共産党員であることが不文律となっています。そのため全人代は、共産党で決定したことをそのまま承認する、いわば「ハンコを押すだけ」の存在、「ラバースタンプ」だと揶揄されています。

●全国人民代表大会の代表選出方法
 全国行政区分の「クラス」ごとに代表大会があり(いわゆる地方議会)、そのクラスの人民政府を指導することになっています。そのうち全人代・代表を選出するのは、省・自治区・直轄市・特別行政区(香港・マカオ)の人民大会代表です。また、軍も全人代・代表を選出することができます。
 具体的には、県クラスの人民代表大会が互選で、その上位クラスである都市クラス人民大会代表を選び、都市クラス人民大会代表が、省クラス人民代表大会代表を選ぶ仕組みとなっています。一般人民が直接選挙で代表を選出できるのは県クラス以下の代表大会のみとなっています。
 全人代も含め、各クラスの人民代表大会の代表の任期は5年です。

●党政治局常務委員会と全人代常務委員会
中国の政治局常務委員
 党政治局常務委員会と全人代常務委員会は同じ常務委員会と名がついているので、混同されがちですが、全く別組織です。共産党の方が偉いのですから共産党の常務委員会の方がずっと権力も上なのです。そして現在のメンバーは図に掲げたとおりです。序列もきちんと決まっています。

(1)党政治局常務委員会
 党中央政治局常務委員会は、中国共産党の最高意思決定機関で、「中国共産党が国家を領導(指導)する」という中国の政治構造において、事実上の国家の最高指導部であります。現在の構成員は胡錦濤総書記以下9名(政治局構成員は25名)。現、中央政治局常務委員9人の序列は上図の通りです。

(2)全人代常務委員会
 常務委員会は全人代の常設機関で、全人代閉会中に最高の国家権力を行使し、立法機能を代行します。構成メンバーはだいたい200人くらいおります。委員長(1名)、副委員長(若干名)、秘書長(1名)、委員(約 200名)により構成。毎期の全人代会議で、全人代議員から立候補者を指名し、大会全体会議にて選挙で選出されます。任期は5年。構成員の連続当選の制限はありません。ただし、委員長と副委員長職には3期以上連続して就くことはできません。なお、常務委員会の構成員は国家行政機関・裁判機関・検察機関の職務の兼任は禁止されています。

●国家主席の地位と権限
中国の国家主席と共産党総書記
 国家主席は英語ではPresidentで象徴的な国家元首ですが、中国のリーダーは国家主席ではなく、共産党総主席です(国家主席より上位の職位)。中国憲法では国家主席に大きな権限を与えていません。多くの権限は儀礼的行為に限定されています。
 中国成立直後の国家主席は大きな権限を持っていました。しかしその後、文化大革命が起こり、共産党(毛沢東中心)と国家主席の対立から、国家主席は廃止された経緯があります。

 その後、ケ小平が実権を握るようになった1983年、国家主席制は復活しました。しかし、ケ小平は最高実力者でしたが、国家主席の地位には就かず、そのため国家主席は象徴的な存在とされるようになったのです。
 ケ小平氏の死後、共産党のリーダーである総書記が国家主席を兼任するようになっています。その結果、総書記と国家主席とどちらが偉いのかという素朴な疑問はなくなりました。
 国家主席の被選挙権は45歳以上となっていて、任期は5年、2期までです。つまり、1人のカリスマによる長期政権をいまの中国は否定しているのです。

●首相すなわち国務院総理の地位と権限
国務院は憲法で最高行政機関とされていて、日本でいう内閣にあたります。そのリーダーが総理で現在、温家宝氏がなっております。
  国務院には総理のほか、副総理、国務委員、各部部長、各委員会主任などがいます。国務委員は基本的に顧問的な存在です。部長や委員会主任が閣僚に相当します。たとえば外相は「外交部長」、国防相は「国防部長」というのが正式名称です。部長と呼ばれますが、日本でいえば大臣です。国務院の「閣僚」は全員共産党員であるのが暗黙の了承事項です。
 総理・副総理・国務委員の任期はやはり5年で、2期までとなっていて、10年勤める人が多い。党の総書記も10年です。今秋に代わるということは2002年に胡錦濤さんが江沢民から引き継いで10年たつということです。

●中央軍事委員会と軍
 軍の統率権は今も中国指導者には欠かせない重要な権力のひとつとなっています。中央軍事委員会は、人民解放軍、人民武装警察部隊の統率にあたる重要機関です。党の総書記はこの中央軍事委員会主席を兼ねるのが一般的です。現在、2005年から胡錦涛総書記が中央軍事委員会主席も兼ねています。
共産党の仕組み
 人民解放軍はもともと「共産党の軍」として創設されたものですが、中国建国後、解放軍が「党の軍」なのか「国軍」なのか、あいまいな時期もありましたが、現在では共産党の指導を受けるものの、解放軍は国軍であると位置付けられています。
 共産党にも中央軍事委員会があり、そのメンバーがほぼそのまま国家の中央軍事委員会委員を兼ねています。人民解放軍の司令官たちも、ほとんどが党幹部です。
 かつて、ケ小平氏は、国家のポストには一切つかず、中央軍事委員会主席として君臨、大きな力を握っていました。前の国家主席である江沢民氏も、それにならって国家主席を辞めた後(2003年)も中央軍事委員会主席の座はそのままで、「院政」を狙っていましたが、党内で批判的な声が多く、2005年には辞任しました。そのくらい軍を抑えておくことが中国の政治家には大事なことなのです。

●中国共産党のしくみ
 現在7,000万人といわれる共産党員のトップが総書記。総書記は9人いる政治局常務委員を兼ねていることが普通です。党政治局常務委員こそが、中国を指導する真の最高幹部といえます。
 その下のクラスが政治局員であり、さらにその下に中央委員がいます。ここまでが党中央の主要幹部です。さらにその下に党大会に出席できる代表たちおよそ2,500人がいて、その下に一般党員がいるという形になっています。
 政治局員や中央委員たちの多くは党の役職についていて、その多くは地方でのものです。
共産党は省あるいは直轄市・自治区ごとに委員会を設けていて、書記がナンバー1となって地域の政治を指導しています。
 書記がその省の人民代表大会主任(議長)を兼ねることが普通です。一方、国家組織としての省のナンバー1である省長、日本でいう知事には副書記が就任します。書記は中央からの派遣で、副書記は地方幹部からの登用というのが一般的です。例えば、福建省の省長より福建省共産党委員会の書記の方が偉いということです。

●共産党以外にも存在する政党
 中国は一党独裁とよく言われ、共産党しか政党がないと思われがちですが、実際には「民主党派」といわれる小政党が8つもあります。ところがこれらは全部共産党の友党といいますか、共産党に逆らうことはありません。
 8政党とは、
 ・中国国民党革命委員会(民革、国民党の分派)
 ・中国民主同盟(民盟)
 ・中国民主建国会(民建)
 ・中国民主促進会(民進)
 ・中国農工民主党(農工党)
 ・中国致公党
 ・九三学社
 ・台湾民主自治同盟

 これらは共産党の中国指導権を受け入れた共産党の「友党」であり、共産党と「中国人民政治協商会議」を作っています。
 歴代の会議主席には共産党の幹部が就任しており、この会議に共産党に対する監視などの役割を期待するのは難しいといえましょう。

●選挙
全人代の選出
 選挙のやり方は右図のようになっています。直接、人民が選べるのは県以下、中国の行政組織では県の方が市よりも下です。これ以下のクラスまでは人民が直接投票で選べます。その上は間接投票になります。
 そうやって直接選挙で選ばれた、県の人民代表大会代表が上位クラスの都市人民大会の代表を選び、都市クラス人民大会代表が、省・自治区・直轄市の人民代表大会の代表を選びます。また、省・自治区・直轄市の人民代表大会代表の中から全国人民代表大会の代表が選ばれます。つまり、下位の人民代表大会から上位の人民代表大会に上がっていく仕組みですから世襲の入り込む余地はありません。
 その代わり、間接選挙ですから、上位クラス人民大会代表を選ぶ有権者の数は限られていますから、集票活動は表舞台、裏舞台を問わず激烈です。日頃、面倒見がよく、選挙の際には多額のお金を動かせる候補者が有利となるのは当然です。
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5.権力闘争

●リーダー交代 権力交替
 現在は総書記および国家主席は胡錦涛さんで、首相は温家宝さんです。それが共産党18回大会(2012年10月)で指導者層が大きく入れ替わり総書記が習近平さん、首相が李克強さんになるとうわさされております。まだ決まったわけではありますうが。現在9人いる常務委員はこの二人以外は全部変わるといわれています。不文律として常務委員の暗黙の定年は改選時68歳以下となっているのです。

 次期常務委員候補としては、次の11人が上がっていて、そのうち多くて9人が選ばれることになります。赤字の薄熙来さんは、今回、重慶問題を起こして失脚したのでなれないと思われます。それから69歳、70歳という人がいますからこの人たちも無理ですね。
 ・習近平:国家副主席(58歳)
 ・李克強:副総理(56歳)
 ・薄熙来:重慶市委員会書記(62歳)
 ・汪洋 :広東省委員会書記(56歳)
 ・張徳江:副総理(65歳)
 ・王岐山:副総理(63歳)
、  ・李源潮:中央組織部長(61歳)
 ・戴秉国:国務委員(70歳)
 ・劉延東:国務委員(66歳)
 ・王剛 :全国政治協商会議副主席(69歳)
 ・兪正声:上海市委員会書記(66歳)

●習近平氏のプロフィール
習近平氏のプロフィール

 習近平氏の経歴を上に掲げましたが、氏は少年時代、父・習仲勲が文革で批判された関係で、近平氏も反動学生とされ、1969年から7年間も、陝西省延川県に下放されました。大学には4年も遅れ、1975年、清華大学化学工程部に入学しています。共産党に入ったのも下放から戻って大学に入った後だったといいます。
2000年に福建省で大規模な汚職事件が発生し、省書記以下多くの共産党幹部が逮捕される中、副書記であった習氏は免れ、49歳で浙江省党委書記に抜擢されます。2006年、上海市の大規模汚職事件で上海市党書記に就任するなど、汚職事件のたびに巻き込まれることなく出世を果たします。これらの背後には江沢民氏の強力な贔屓があったことは万人の知るところです。
 奥さまの彭麗媛は有名な軍隊歌手(国家一級演員、人民解放軍総政治部所属・少将)で、中国で一番有名な歌手といってもいいスターです。北京オリンピックの時の女の子の口パクの演出はこの人がしたといわれています。ハーバード大学に留学中のひとり娘・習明沢(1992年生、浙江大学外国語学院卒業)がいます。
 後に申しますが習近平は太子党という非常に強権的な派閥におりますので、本人は一生懸命リベラルな姿勢を示そうと躍起になっています。官僚の腐敗に対しては厳しく臨み、政治的にも経済的にも開放的な姿勢をもった指導者として知られています。
 現在の中国共産党幹部の演説や文章を「冗漫、空虚、偽り」で覆われているとし、文章や演説をもっとわかりやすくし、国民に理解できるよう改革する必要性を主張しています。「一般大衆は歴史を作る原動力だ。腹を割って話さなければ、大衆は理解できない」と述べ、自身のリベラルさをアピールしています。

 2009年12月、日本を訪問しました。中国側は天皇との会見の要請に対して、小沢氏が動き、12月15日には会見が行われました。
習近平氏の天皇会見
 今年、日中国交正常化40周年を迎えます。両国上層部は「5年ごとに小規模な祝賀行事、10年ごとに大規模な祝賀行事」の慣例に照らして、特に素晴らしい行事の開催を望んでいます。日本メディアによると、中国政府は日本側に皇太子夫妻の今秋の訪中を非公式に要請してきているとのことです。実現すれば皇太子の初訪中となります。日本メディアは釣魚島問題などで衝突が絶えない中、中国側には国内の対日感情を改善し、両国関係を強化する狙いがあるものと見ています。

●李克強氏のプロフィール
李克強氏のプロフィール
 李克強さんは胡錦濤と同郷・安徽省定遠の生まれ。北京大学・大学院で法学と経済学の博士号を両方取得している才子です。部下を決して怒鳴りつけることはせず、公私で他人の悪口を言わず、周囲に常に笑顔を見せているといわれています。共産主義青年団の頃、胡錦濤と行動をともにすることが多く、胡錦濤氏は李克強氏の人柄を見込んで青年団書記候補に抜擢しました。かつて世田谷区の小沢一郎邸に居候していた経緯があり、現在も小沢氏の中国人脈として最も太いパイプといわれています。

●派閥闘争
 現在、中国の中央での派閥は「共青団」、「太子党」、「上海閥」です。そのうち太子党と上海閥とは同盟関係にあり、事実上は共青団と太子党の二大派閥といえます。
派閥の構図
 共青団とは中国共産主義青年団の略称で、共産党の若手エリート団員を育成する青年組織です。団員数は7543万9000人(2007年末現在)といわれています。 共青団出身者で各地共産党内部で活躍している 人々を「団派」と呼んでいます。団派は故ケ小平氏が育てたインテリ階層で、共青団という組織を上り詰めてきた現行の執行部をいい、その代表が胡錦濤氏であり、温家宝氏です。イメージとしては昔の科挙に受かったエリート官僚といいったところです。

 団派が勢いを得たのは、2002年、胡錦濤氏が総書記に就任したことによります。その後、徐々にその勢力を拡大しています。2006年以降、省党委書記(及び市党委書記)が、省長(副書記)が共青団出身者という構図が多く見られます。かって地方共産党のトップの上海幇(江沢民氏をトップに戴く上海閥)で占められていましたが、徐々に共青団出身者にとって代わられています。

 もう一つの太子党とは中国共産党の高級幹部の子弟等で特権的地位にいる人たちのことです。親の七ひかりで要職についている人たちです。そしてこれらの関係をややこしくしているのは上海閥というのがあるのです。これは江沢民さんが上海にいた関係で現在の常務委員のうち6人が上海閥です。悪いことをやりたい放題やってきたのがこの上海閥です。

 政策的には団派が中国の遅れた貧しい人々の地位の向上に熱心で、日本的なイメージでは革新的であり、また対外的には温家宝氏がそうであるように協調的です。
 一方、太子党は自分たちの利益を最大限に維持することに熱心で保守的な体質を持ち、江沢民氏がそうであるように対外的には常に強圧的な対応を好みます。
 共青団と太子党がポスト胡錦濤をめぐって熾烈な争いを行ってきましたが、この2010、ポスト胡錦濤は太子党の習近平氏になることが決まりました。習近平氏が中央軍事委副主席になることが採択されたのです。
 国務院総理の座は、共青団の李克強氏と太子党の王岐山氏の間で争われたが、李克強氏でほぼ決まりです。

 常務委員候補について香港誌「アジアウィーク」は昨年秋時点での下馬評は下の表のとおりで、序列9位の党政法委書記の席をめぐって重慶市書記・薄煕来と広東省書記・汪洋氏が熾烈な争いが展開されていました。汪洋氏は共青団に属していますが、氏の叔父がかつて江沢民の上海閥で、上海市長を勤めていた関係で、太子党、上海閥の支持を受けています。昨年秋時点では最期の1名を除いて太子党(上海閥含め)5に対し、共青団3名でした。ところが今年1月には序列4候補の共青団・張高麗氏がはじかれ、そこに上海閥・張徳江氏が抜擢されました。空位の序列8位には薄煕来が滑り込み、9位は汪洋氏と現公安部長孟建柱氏が争っています。2月末、薄煕来が重慶事件(後述)のとばっちりで、重慶職を辞任し、秋の常務委員入りに赤ランプがつきました。共産党大会までには半年もあり、まだまだ一波乱も、二波乱もありそうです。
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6. 現政権が抱える重要課題

政治局常務委員をめぐる駆け引き ●政府の基本姿勢
 権力移行時の敏感な時期に、中国政府が最も重視するのは「安定」です。国内では、「格差の拡大」が深刻で、一向にやまない「党幹部の腐敗」などへの不満から、各地で暴動が頻発しています。
 これら内政上の懸案の解決に全力で当たらなければならない中国は、安定した外交環境を望んでいます。今年の中国外交の展望に関して、楊外相は「さらなる良好な外部環境を作るべきだ」と強調していますし、安定を維持する上で重視しなければならないのは、アメリカ、朝鮮半島情勢、日本との関係であるといい切っています。

●外交問題
(1) 北朝鮮問題
 朝鮮半島を揺るがす事件が起きる度に、中国外務省は「朝鮮半島の平和と安定」という表現を使用しています。中国の本音は、韓半島の現状維持で、統一は望んでいません。
 中国は、韓半島が統一されれば、新たな試練に直面すると表明しています。韓半島統一後の懸念とは、統一大韓民国のビジョンが曖昧であること、大規模な脱北難民が流入し、東北朝鮮族と結びついて民族問題化することを警戒しています。チベット族、ウィグル族との民族問題で頭が痛いのに、これに朝鮮族との民族問題が発生してはえらいことになると言うのが本音でしょう。

 それに加えて、高麗大大学院のキム教授は「統一韓国が米国との同盟に基づき、中国と対立することや、日本、オーストラリアまで加わり、中国を封じ込めるための前進基地となることを最も懸念している」と分析しています。
 北朝鮮が崩壊に至れば、中国に大量の難民が押し寄せて国内の安定が損なわれる恐れがあります。国境を接する朝鮮半島の安定を最も重要視する課題の一つとして位置づけています。
 金総書記の死去後、速やかに金正恩体制への支持を表明し、北朝鮮を支える姿勢を鮮明にし、大規模な食糧支援を実施すると発表しています。北朝鮮の最大の支援国である中国の影響力に各国からの期待が高まる中、活発な中国の動きからは、北朝鮮情勢をテコにしてアジアでの影響力を拡大したいという思惑もうかがえます。

(2)台湾総統の選挙結果
 総統・議会ともに馬総統率いる国民党が勝利し馬総統は勝利宣言で、「我々は勝った。(中国と)争うことをやめて平和を推進し、危機をチャンスに変えた政策が評価された」と述べ、多くの有権者が「中国経済なしには台湾経済は成り立たないとして中国との安定した関係を望んだ結果」と付け加えました。
台湾総選挙で馬総統勝利
 それに対して中国は「4年間の両岸関係の平和発展が正しい道のりであり、台湾同胞の広範な支持を得ている」といっています。 また、「我々は、台湾独立に反対し『92合意』を堅持するという共同認識の下で、台湾各界と連携して努力し、引き続き両岸関係の平和的発展の新たな局面を開拓したい、そして中華民族の偉大な復興に共に尽力したい」と喜んでいるのです。
 一方アメリカは、「中台関係の安定は米国に極めて重要」との声明を発表、オバマ政権は、馬政権が一段と中国に傾斜する可能性を非常に警戒しているようです。

(3)米中関係
 アメリカとは去年、南シナ海をめぐる問題で対立が鮮明となりました。南シナ海で資源を確保し、軍事的なプレゼンスを高めようと海洋活動を活発化させている中国に、アメリカは警戒を強めています。
 膨張する中国の動きに対抗し、オバマ大統領は「アジア太平洋地域を安全保障上、最優先に位置づける」と宣言。去年11月の東アジアサミットでは、東南アジアの各国と連携し、南シナ海をめぐる問題で対中国包囲網を拡大しています。
 中国は空母の開発など軍の近代化を推し進めるとともに、領土をめぐる問題やチベット・台湾など「核心的利益」で内政不干渉を主張し、アメリカを引続き牽制していくものと思われます。その上で、「アメリカ国債の最大の保有国」の立場を生かし、重要な輸出先であるアメリカと経済面での協力強化を求めていく考えだと思います。

(4)日中関係
 中国漁船衝突事件以来、冷え込んだままの日中関係ですが、昨年末の野田総理大臣訪中による日中首脳会談では、危機管理に向けた海洋協議の立ち上げ、および金融面での協力など、幅広い分野で進展がありました。
中国側も、東日本大震災の被災地へのパンダの貸与で友好ムードを演出し、日中関係は、改善に向けて動き出したといえそうです。
 清華大学・劉教授は、昨年末の日中首脳会談で、「戦略的互恵関係の枠組みを再確認できたのは大きな成果」と評価しています。
 日中外交筋は「権力が移行する今年、中国は誰が指導部となっても、隣国・日本との関係を重視し、安定を求め、衝突を避けるであろう」との見方を示しています。
 東シナ海のガス田の共同開発など、双方の利害が衝突する問題での進展は依然として不透明ですが、国交正常化40周年というタイミングを生かして日中関係の改善が進むと期待できそうです。

(5) 領土問題
 中国は15億の人間を食べさせていかなくてはいけない。そのためのベースである、領有権と海洋権益の維持は中国外交にとって根本的目標であり、この点が揺らぐことはないでしょう。
 新年早々、日本の石垣島市議4人が釣魚島に上陸しました。 これに対し、羅照輝・外交部アジア司長は1月5日、釣魚島問題で日本はもめ事を引き起こしてはならない。係争が解決するまで、もめ事を引き起こさず、いかなる一方的行動も取らないよう日本側に要求すると言っています。

 また1月17日、日本政府が尖閣諸島周辺の無名の39島に名称を付けると発表したことに対してもこれを受け、中国政府は「釣魚島とその周辺の島々は古来、中国固有の領土で、また1月17日、日本政府が尖閣諸島周辺の無名の39島に名称を付けると発表したことに対してもこれを受け、中国政府は「釣魚島とその周辺の島々は古来、中国固有の領土で、中国は争うことのできない主権を有している。中国の釣魚島の領土主権を守る決意は断固として揺るぎない」と反発していますがあまり強い反発はしていないのです。とにかく波風を立てないでおきたいと言う方針が明らかに見えています。

(6)習近平外交
 習近平氏は2010年秋党中央軍事委員会副主席に就任後、1年で日本をも含めて40ヶ国を訪問しています。昨年暮れからだけでもベトナム、タイ、アメリカ、アイルランド、トルコと八面六臂の行動で、しかも行く先々でソフトムードをアピールし、好感ムードの評価を得ている。かつての中国トップでは考えられなかったことです。
 2月12日にはアメリカを訪問し、アメリカ側は国賓待遇をもって迎えました。オバマ米大統領は14日、習近平国家副主席とホワイトハウスで会談し、「強固な米中関係の構築が決定的に重要だ」とする一方、「国力の拡大と繁栄には責任の増大がともなう」と述べ、貿易不均衡や人権問題の改善を要求しました。今秋、最高指導者に就任することが確実視されている習副主席に「大国の自覚」を促しました。
 習副主席は今回の訪米目的を「中国と米国の関係が正しい方向に進むよう努める」と説明、相互理解に基づいた協力関係の構築を訴えました。
 また、米国が重視する貿易不均衡問題に関しても対話を続ける考えを明らかにするとともに、アイオワ州では大豆862万トン、金額にして43億ドル分を輸入する商談をまとめ、アメリカ側の不満を少しでも和らげようとの姿勢を示しました。

(7)アメリカ国債
 アメリカの国債は55%が国内で、45%は外国が買ってもらっています。今までは日本がほとんどを買っていたのです。
アメリカ国債の引受先
 しかし、現在の中国の米国債保有額は1兆1326億ドルで、世界最大の米国債保有国であり、2010年6月以来、中国の米国債保有規模は18ヶ月連続で1兆ドルを超えています。そして最近アメリカの国債を中国は少しずつ売っているのです。

 中国は昨年11月、米国債15億ドルを売却し、2ヶ月連続での売却となりました。アメリカ国債の11月末現在の国別保有額ランキングは、1位中国:1兆1326億ドル、2位は日本:1兆389億ドル、3位は英国:4294億ドルとなっています。

(8)日本国債
 アメリカの国債を一部売って中国は日本国債を買っています。円高情勢が顕著で、中国政府は短期国債を売却して、長期国債を購入する意図と考えられます。また、日本は中国の長期にわたる貿易相手国であり、中国側も一連の日本円建て長期資産を継続的に保有することを望んでいるようです。

●国内最重要課題
 胡錦濤政権が最後に取り組むべき最重要課題を次の4つと位置づけています。
 (1)インフレ抑止
 (2)腐敗防止
 (3)格差是正
 (4)高齢化対応

(1)インフレ抑制
 ここ2、3年中国政府が最も力を入れている経済政策は格差是正とインフレ抑制です。経済成長が順調で、賃金が5年来毎年15%アップ、これからも15年まで10%以上賃金が上がることを保障(格差対策)してくれればとなると、インフレにならない方が不思議です。この相反する命題に取り組まねばならないのですから大変です。
 中国政府がインフレ抑制上、注力しているのは投機マネーを抑え込み、それによって食料品の高騰、不動産バブルの抑え込もうとしています。政府の不動産高騰対策としては以下のようなことが行われています。
 ・住宅ローン金利の引上げ。ローン適用制限
   金利:2010年10月4.3% 2011/2 4.5%  2011/7 7.05%
   頭金:1戸目30% 2戸目50% 3戸目 融資不可
   税 : 取得税アップ  固定資産税新設
   これでは住宅販売が激減するのは当然のことです。
 ・銀行の預金準備金率アップ
   2010/10〜2011/7 5度準備金率を引上げた
   (2011年12月 行過ぎ是正で0.5%引下げ)
 ・低所得者向け住宅建設
   2011〜15年 3,600万戸建設  平均70u 70万元(市価の50~60%)
 不動産取得の目的は本当の意味でのマイホームの購入という庶民も含まれています。この人たちの救済策としての安価住宅を5年間に3,600万個も用意するという細かい気配りも持ち合わせています。いかに民衆の不満を恐れているかの現われではあります。

(2)腐敗防止
 中国政府は2009年9月から2011年3月までに建設工事分野の紀律違反、法律違反について1万7200件を立件。庁(局)級幹部78人、県(処)級幹部1,089人を含む1万1273人を党・行政紀律処分に処し、5,698人を司法機関に送致しました。また、工事分野の職務犯罪計1万2344件、1万5010人を処分しています。その内訳は背任・横領・賄賂などが1万1050件、1万3416人で金額は29億9000万元余。職権濫用・権利侵害などが1294件、1594人で、国の経済的損失3億6000万元余りを回収したと公表しています。 ものすごい腐敗が現実にあり、それを取り締まらないことには民衆の不満が抑えられなくなっているのです。  

(3)格差是正
 2010年、地域別・1人当たりGDPを図示しますと下のとおりです。トップ10にランキングされる地域(図中空色)は東部沿岸地方に集中しており、逆にワースト10(黄色)は内陸部、特に西部地域に集中しています。 GDPが低いと当然、個人収入も低くなります。都市部と農村部の貧富差が3.23:1となっていますが、同じ農村部でも東部地区と西部地区では差があります。

地域格差

 米国、英国他の欧米諸国での都市・農村の格差は約)中国を含めわずか3ヶ国です。
所得格差の程度を示す数字として有名なイタリアの学者が考えた、ジニ係数という指標があります。値は0から0.5まであり、0.4をこえると格差がひどく、是正が必要なレベルとなります。特に「0.45を超えると国内で暴動が起きる可能性がある」というレベルで、中国の09年の実力は0.46となっています。同年の日本は0.38です。
 これを何とかしないと暴動が起きる可能性があると中国は対策に必死です。なにせ歴代の中国王朝が倒れたのは暴動が原因になっていたことは歴史の教えることですから。政府の格差対策は公共工事の西部地区集中、沿岸地区の企業を西部地区へ移転させる、それと貧困者救済です。

ジニ指数 地域格差

 開発政策として行われている公共投資は以下のようなものです。
・西電東送:西部地域の電力を東部沿岸地域に送電。総事業費1,000億元超。
・南水北調:南方地域(長江)の水を北方地域に送り慢性的な水不足を解消。
 5,000億元。東ルート:08年8月完成済
・西気東輸送:西部の天然ガスを東部沿岸地域に輸送
・青蔵鉄道 :青海省西寧とチベット自治区ラサを結ぶ高速高原鉄道。06年7月1日営業開始。

 それから日系や台湾系などを含めて東部沿岸にある工場はハイテク企業以外は西に行ってください。その政策を「騰籠換鳥」といいます。「鳥かごを新しくして中の鳥を入れ替える」ということです。これを徹底的にやっています。今までの外国企業に対する優遇措置を全部廃止して、地方に行ってくれたらそのまま優遇しますよという形です。例えば関税の保証金、今まではいらなかったものが全部前金で50%貰います。但し中西部へ移ったら今まで通りですとか17%の増地税の輸出時バックをなくしますとか、法人税もあげていきます、給料を毎年2008年から年平均で15%ずつ上げています。11年で終えて、次に15年までになら給料を倍増しようということが計画されています。2008年から2015年で給料は4倍になるのです。嫌なら出て行ってもらっても結構ですということです。

 そして貧困者救済策です。中国の貧困基準と貧困者数は下記のようになっています。
・絶対貧困:最低限の生活水準すら満たされていない階層:2007年水準で1人当り純収入が785元/年以下。
・相対貧困:1人当り純収入が786〜1,067元年の相対貧困者。
 2010年末、生活水準が不安定な状態にある低所得者(絶対+相対貧困者)人口は合計2,688万人。
それに対して政府が実施している対策が最低生活保障金制度です。これは日本の生活保護給付金に相当するものです。 ・最低生活保障金受給者数:   都市部:2,233万人。農村部:985万人 。計3,218人 、ちなみに日本は308万人くらいです。人口比率で見ると中国とほとんど一緒です。

 またギャラップの発表によると、食費にも事欠く生活を送る人は米国で19%、中国で6%と中国は少ないのです。食糧など生活向け物価が安いということもありましょう。
 最近発表された農村貧困者支援状況白書からは貧困者数は2000年から2010年で9,422万人から2,688万人に減少したと書かれています。
 こういう状況で人民の不満を和らげる。その最大の内容はインフレと格差の解消、それに幹部の汚職です。この3つを徹底的に今秋までに、胡錦濤さんがいるうちにやってしまおうと一生懸命やっているのです。
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講座・企画運営:吉田源司
文責:臼井 良雄
会場写真撮影:臼井 良雄
HTML制作:大野 令治

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