現在位置: ホーム(1)講義録一覧(2) >大津波に負けずに咲いた花の絵葉書配り 

WEBアクセシビリティ対応

ページの先頭です

2012年9月21日 NPO法人神田雑学大学 定例講座No617 


講義名 大津波に負けずに咲いた花の絵葉書配り


講師 安原 修次 (野の花の写真家)
野の花の写真家


(クリックをすれば該当の項へ進みます。
ブラザの「戻る」ボタンで目次に戻ります。)

講師紹介 (吉田源司理事)

三陸の仮設住宅をまわって花の絵葉書配布

1. 私にできること

2.大津波にめげずに咲いたハマナスに感動

3.車中泊をして絵葉書の配布準備

4.野の絵葉書を仮設住宅のみなさんへ

5.ハマナスの思い出

6.暑いなか、これをどうぞ……

7.絵葉書を追加

8.心を癒してくれる写真集

『三陸の花』の出版を




 安原修次さん (野の花の写真家)

講師紹介 (吉田源司理事)

1936年、群馬県生まれた安原修次さんは、千葉県内の小・中学校に勤務していました。ところが、 日本各地から環境の変化や自然破壊、野草ブームからの盗掘などで消えゆく野の花に危機感を覚えました。

貴重な野の花を後世に残すため、今ある植物を記録し、植物保護の世論づくりに少しでも役立てばと考え、 48歳で教師を退職、植物写真家に転向しました。

以来30年近く、各地に咲く花を撮り続け、その貴重な生態をまとめて、30冊近い写真集を出版。 ときには、崖から転落するような危険に遭いながらも、夢中で写した安原さんの一念がこもった写真には、 可憐な野の花に対する愛情にあふれています。

そんな安原さんに、「日本の山野から消える花たち」ということで、平成22年2月19日に神田雑学大学定例講座(No.494)でお話いただきました。
http://www.kanda-zatsugaku.com/100219/0219.html

さて、東日本大震災で大きな被害を受けたみちのくは、そろそろ錦秋の季節を迎えます。美しい野の花々はじめ、被災地の現状について、 かねがね胸を痛めてこられた安原さんは、「力仕事のお手伝いはできないけれど、自分にもなにか力になれるはず」と、 被災地に健気に咲く花の絵葉書をつくり、これまでに12000枚を超える絵葉書を仮設住宅に暮らすみなさんに、お話をうかがいながら配ってこられたそうです。 きょうは、安原さんの「絵葉書配り」とそれに込められた想いを語っていただきます。

メニューに戻る(M)

三陸の仮設住宅をまわって花の絵葉書配布

1.私にできること

私は、全国の山野に咲く花を撮影して、本にまとめている写真家の安原です。 私は、阪神・淡路大震災の2年後、『花ひらく神戸』を出版しました。 ある仮設住宅の集会室で、花のスライドを紹介して、とても喜ばれました。その様子が、NHK大阪にとり上げられたところ、 ほかの仮設住宅からも要望がたくさん寄せられました。映像であっても、野の花は、人々のこころを癒してくれるのだと実感しました。 被災者を助けるとか、人のためというより、なにより自分のためになりました。自分自身、とても良い経験をさせていただきました。

メニューに戻る(M)

2.大津波にめげずに咲いたハマナスに感動

2012年4月18日、「三陸の花」を撮って写真集をつくろうと、岩手県へ。北は野田村から南は大船渡市まで、南北100キロ以上移動して、 海からおよそ30キロの範囲に咲く野の花を写しました。ガソリン代が高いので、宿泊代を節約するため、月の半分は車中泊をしたり、 宮古にある家を借りたりしました。

こちらで、どんなボランティアができるかと考えていたら、野田村の十府が浦海岸に群れ咲くハマナスを見つけました。 三陸海岸の浜辺一面に咲く赤いハマナス、白い砂浜、真っ青な海。打ち震えるような感動を覚えました。津波に遭ったのにも負けず、 咲き誇るハマナスをしばらく、ぼう然と眺めていました。 他の三陸海岸でも、ハマナスは自生していますが、大津波で半分以上流されてしまっているところが多いのです。 ところが、ここでは、がっちりスクラムを組んでいるかのように残っていました。

「そうだ、この三陸のハマナスを撮って絵葉書を作ろう。それを持って仮設住宅を回ろう。被災したみなさんのこころの癒しになるかもしれない」と思いました。 これこそ、写真家の自分にできることだと。 さっそく、全国の花仲間に呼びかけた(1口1,000円)ところ、80,000円ものカンパが寄せられました。それでまず、 10,000枚のハマナスの絵葉書をつくりました。

メニューに戻る(M)

3.車中泊をして絵葉書の配布準備

 聴講生 7月16日、日中は花の撮影。昨夜は、車中泊。夜7時に夕食をすませ、車の中で寝袋にくるまって、ラジオを聴いて過ごしました。 朝4時半に目覚め、ラジオをつけたけれども、よく聴こえない。5時に起き出して、今日配布する絵葉書の袋詰め(セロハンに2枚ずつ)を用意して、 6時には完了。

そのあと、炊事用具を取り出し、外にビニールシートを敷いて、ガスボンベに点火。 ごはんが炊けるまで、車内でタワシ摩擦。腕立て伏せ76回(年齢と同じ回数)。車外に出てラジオ体操。これらは、体力維持に欠かせません。 そして、ささやかな朝食をすませ、昼食のおにぎり2個をつくりました。

メニューに戻る(M)

4.野の絵葉書を仮設住宅のみなさんへ

7時30分、炊事用具を車に積んで、絵葉書の配布にとりかかります。地図を見て、近くの仮設住宅へ。まず、 仮設の世話人を訪ねて、配布の許可を。無断で回ると、いくら良いことをしていると思っていても、あとで問題になることもあるので、要注意。

玄関で「おはようございます」と声をかけても、テレビの音はするけれど、返事はないので、玄関に絵葉書を置いて帰ります。 「暑中お見舞いの葉書に使ってください」といっても、「結構です」というのは、主に若い女性。 「誰だ。勝手にポストに入れるんじゃねえ」と男の声で怒鳴られたことも。ふだん、いろいろなチラシが入れられるので、 そのことに腹を立ててのことのようです。

なかには、「絵葉書なんていらない、それより金でも入れてくれんか」。
「ほんとうにいただけるのですか?」と7枚追加してもらってくれた女性。「この絵葉書なら、見た人に勇気を与えそう」と喜んでくれました。 朝は、青空だったのに、8時を過ぎたら急に霧雨になりました。

メニューに戻る(M)

 講演中の安原修次さん

5.ハマナスの思い出

_
別の地域の仮設住宅へ。こちらは、川や水田に囲まれて自然豊か。けれども、暮らすとなると不便だろうと想像します。 なにしろ、1日3回のバスしかないので、車を持っていないと買い物に出るのも大変です。

「ごめんください。ハマナスの絵葉書をどうぞ」と、できるだけ明るい声で話しかけます。ここでも「うちは結構です」という人が多い。 ところが、「きれいな絵葉書ですね」と藤原さんという女性は、5枚追加してもらってくれました。 「むかし、浜で八重のハマナスを見つけたんです。かおりが良かったので、その花をお風呂にいれて、楽しんだものです。 でも、津波で花はすべて流されてしまいました」

集会室をのぞくと、6、7人の女性がにぎやかに談笑していました。挨拶をすると、「千葉から、遠いところご苦労さま」と声をかけてもらいました。 「好きでやっているので、大変だとは思いませんよ。被害に遭われたみなさんのご苦労にくらべたら、私のやっていることは遊びみたいなことですから。 いろいろな人と出会えるので楽しいです」「そういうこころがけでないと、ボランティアなんてできませんものね」

突然の訪問なので、会ったときは反応がなくても、あとから電話をいただくこともあります。 73歳の女性より。「先ほどは、絵葉書をいただきながら、お礼もいえず失礼しました。むかし高女に通学していたころ、 学校近くの海岸に、この絵葉書のようなハマナスが咲いていました。

60年もむかしの話で、最近は、その海岸からハマナスは消えてしまったと聞きました。 あなたからいただいた絵葉書を見て、なつかしく思い出しました。なんだか気持ちほっとするんです」 そうなんです。野の花は、たとえ写真でも、むかしのことをあざやかに思い出させてくれる、そのきっかけを作ってくれるのです。

メニューに戻る(M)

6.暑いなか、これをどうぞ……

あるとき、仮設住宅の談話室に挨拶にいったところ、 「あちこち回られてお疲れでしょう。これをどうぞ」と女性から飲み物とせんべいを差し入れしてもらいました。また、別な仮設では、 「暑いなか、大変ですね」と缶ジュースやらドリンク剤を持って追いかけるようにして渡されました。その気持ちが有り難く、すぐには飲めませんでした。

メニューに戻る(M)

7.絵葉書を追加

車中泊を切り上げて、宮古の宿舎に車で戻る途中、携帯が鳴りました。 「用事を終えて家に帰ったら、ポストに絵葉書が入っていました。津波をかぶったはずのハマナスが見事に咲いている写真で、感動しました。 頑張らなければと、生きる勇気が湧いてきます。植物は人間より、ずっと強いんですね。それを伝えたくて電話しました」

 安原 修次さんと理事長 野の花というと、けなげな花でほっこりするといわれることが多いけれど、場合によっては、それ以上の大きな感動を人に与えてくれるのです。 このように喜んでくれる人がいると思うと、暑さや疲れも吹き飛んでしまいます。うれしくて、翌日その方に電話をしました。

「絵葉書2枚では足りないでしょうか、20枚ばかり追加して郵送しますので、仮設に入っていない友人や遠くにお住まいの方などに 暑中お見舞いを出してはいかがでしょう。ふつうの葉書よりきっと喜んでいただけるでしょう」

また、斎藤さんという方から電話をいただきました。「絵葉書のハマナスがあまりに美しく、津波のあとの浜辺に咲いていたとは思えないくらいあざやかで なピンク色で感動しました。住所などの記録もすべて津波に流されてしまったので、せめて、大船渡市内に暮らす山野草が大好きな友人に、 安原さんの写したハマナスを見せてあげたいと思い、明日、訪ねる約束をしました。」

「自宅とともに夫も津波に流されてしまいました。夫は海が好きでしたので、絵葉書の写真を喜んでいるだろうと思います。 見ていると、海から吹いてくる風を思い浮かべます」 というお手紙もいただきました。

メニューに戻る(M)

8.心を癒してくれる写真集『三陸の花』の出版を

こうして私は、絵葉書を配りながら、8月までに1冊の写真集がつくれるほど、野の花を撮りためることができました。 神戸の大震災のときに出した野の花の本もそうですが、本を出すことが、私の最大のボランティアだと思っています。 野の花の写真集は、見る人のこころを癒し、地域のイメージを高め、観光資源としての効果も高いのです。 被災地の人々を勇気づけ、地域の復興にも役立つ写真集『三陸の花』を出版してくれる出版社はないものでしょうか? 

私は、原稿料はいりません。名声や利益のためではなく、被災地の再生への息吹をこめた野の花に一条の光を見た気持ちをこめて、 渾身の思いで記録し、本をつくって残したいと思っています。 三陸地方の花をとり上げた写真集は、まだ1冊もなかったので、ぜひとも本にまとめて、被災者のみなさんに喜んでいただきたいと思います。 みなさんのご支援をよろしくお願いいたします。



会場:ちよだボランティアセンター
講座企画・運営:吉田源司
構 成:吉田悦花
写真撮影:河野成夫
HTML制作:上野治子

本文はここまでです

このページの先頭へ(0)


現在位置: ホーム(1) 講義録一覧(2) >大津波に負けずに咲いた花の絵葉書配り


個人情報保護方針アクセシビリティ・ポリシィ著作権、掲載情報等の転載、リンクについて連絡先

Copyright (c) 1999-2012 kandazatsugaku Organization.All rights reserved.